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Cassina(カッシーナ)のCAB(キャブ)椅子の張替え 2016年5月

個人邸 レストア

椅子の張替え

alt="CassinaカッシーナのCABキャブ椅子の張替え"
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張替え作業

材料:革 ファスナー、のり、糸 等。

alt="CassinaカッシーナのCABキャブ椅子の張替え"
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①革の接着

立体的なイスの形を考えながら接着する

・ふくらみをつける

alt="CassinaカッシーナのCABキャブ椅子の張替え"
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・位置決め

alt="CassinaカッシーナのCABキャブ椅子の張替え"
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・のり付け量の調整

alt="CassinaカッシーナのCABキャブ椅子の張替え"

②ぬいあわせ、ステッチ

厚革と#1の太さの糸なので厚地用ミシンを使う

alt="CassinaカッシーナのCABキャブ椅子の張替え"
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③糸の処理

ステッチやファスナーを付けた所の糸を処理する

alt="CassinaカッシーナのCABキャブ椅子の張替え"

④ファスナーを付ける

きれいにカバーリングする為に位置が大事

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⑤ゴバの処理

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張替え後

alt="CassinaカッシーナのCABキャブ椅子の張替え"
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【「椅子づくり百年物語」( O M 出版)宮本茂紀著より】イタリアモダン人気の秘密はディテールにあり

目に見えないところに工夫が
 約三五年前に、イタリアのカッシーナ社か
ら発売された「キャブ」は、洗練されてシン
プルな形をもつうえに、つくる上でも合理的
によく考えられています。発表されたときに
は、世界中のデザイナーが「やられた」と思
ったはずです。
 二〇年以上前、マリオーペリーニさんが来
日した折に話を聞いたところ、この椅子はエ
ジプトのファラオの椅子からヒントを得たと
いっていました。私もとても美しい、いい椅
子だと思っていましたし、日本でライセンス
契約を結び生産販売されることになった初期
の頃、その製造に深くかかわりました。そう
いう点でも、身近に感じられる椅子のひとつ
です。
 この椅子はタンニン鞣の革(ヌメ革)を、
スチールフレームの上に縫製してかぶせてあ
ります。四本の脚の内側にはファスナーが付
いています。最後にそこを閉めて形を完成さ
せるためです。手縫いではきれいに仕上がら
ない。そこであらかじめファスナーを付けて
あるというわけです。ファスナーを見て、着
せ加え(カバリング)ができると勘違いする
人もいるようですが、これはあくまで製造工
程上の工夫です。
 ファスナーの部分以外は、革を縫合わせて
あります。かなり力のいる作業ですが、イタ
リアでは、女性が軽々とやっています。この
縫製は「型どり」がきちんとしていないと、
うまくいきません。日本でライセンス生産を
始める前に、マテオグラッセ社というカッシ
ーナ社の下請をしていた会社で、一週間ほど
研修をしてきました。
 こうした革を縫ったり、形をつくる技術は、
馬具づくりからきているものが大半です。ヨ
ーロッパでも日本でも、椅子張業の前身は多
く馬具屋です。そんなわけで、私も馬具には
興味があって、ミラノの馬具屋で四日ほど研
修したこともあります。そのときつくったの
が三八頁下の写真のものです。のちにキャブ
の製造に携わるとき非常に役立ちました。
 キャブの中身のスチールパイプは、単に芯
になっているだけでなく、この脚の内側、特
に座面とぶつかる前脚のところに細かい工夫
がしてあります。四二頁の写真のように、U
字形のパイプをつくり、強度を必要とする足
との接続の四隅は、筋交いで強度をもたせる
とともに、革のフォルムがきちんと納まるよ
うになっています。

 また座面の内側はFRPの板を入れて、形
が崩れないようになっています。ただFRP
は破れやすいので、現在のものはABS板に
なって、クッション材が入っているようです。
背のふたつの角にも樹脂が入っています。
 一見スチールの上に単に革をかぶせただけ
のように見えますが、目にふれないディテー
ルに配慮があるのが、この椅子のひとつの特
徴といえます。だからこそ、洗練されたシン
プルなデザインが可能になっているのです。

日本と西洋の違い
ここで革の話を少ししておきましょう。先ほ
どいったように、キャブはタンニン鞣をした
牛革を使っています。ヲードバン(馬の尻の
革)のように見せて加工してある、その「硬
さ」が特徴です。
 このタンニン鞣は、植物性の渋を染込ませ
て鞣すのです。工程は複雑で、ものによって
は、四~五回タンニンを染込ませます。時間
が経つと酸化して飴色になり、切口がバサつ
かない、伸びない、といった特長があるので
ペルトなどによく用いられています。ギャグ
の革の切口も、見て触ってもらうとわかりま
すが、カチカチです。表面は少し熱を加えて、
つるっとした感触にしてあります。
 革はその表面を「銀面」、内(裹)側を「
床革」といいます。日本では製品に使用する
際、この銀面を少し削って使います。傷や動
物の皮膚病の跡などを嫌うからです。イタリ
アなど西洋では、そういうことは気にしない
ので、少々の傷はそのままで寸。私も革は生
きものですから、傷もまた味わいだと思うの
です。また、西洋の革製品は日本に比べて色
が豊富なのが特色です。日本人は色あせを随
分と気にしますが、西洋では日本ほどではあ
りません。気にしないかわりに、きれいで豊
富な色数を好むのです。
 こうした日本と西洋の違いを観察するのは、
どちらがいい悪いということではなく、面白
いものです。キャブもそういう目で観察する
と、イタリアではどういうところを気にして
いるか(いないか)がわかって、興味深いと
ころがあります。
 縫製の目の大きさや座面の裏側にできる円
形などは、多少揃っていなくても平気。その
かわり、弛んだりするのはとても気になるら
しく、ファスナーで締める脚のパーツの隅に
穴が空けてあります。初めは私も何のために

キャブを解体して作成した革のパーツ展開図

マリオ・ベリーニ Mario Bellini
一九三五~ 工業デザイナー。イタリ
アーミラノ生まれ。ミラノエ科大学建
築科卒業。百貨店ラーリナシェンテの
デザインディレクターをつとめる。七
三年ミラノにスタジオ・ーニを設立。
六三年以降、オリベッティ社の主任デ
ザイン顧問、七八年からはルノー社の
デザイン顧問。家具をはじめプロダク
トデザインで数々の賞を受賞。

イタリアの馬具屋に研修に行ってつくった鞍。馬具をつくる技術の多くは、革張の家具の技術に用いられている。

空いている穴なのか、わからなかったのです
が、ここに器具を引っ掛けて革をぎゅっと寄
せてからファスナーを締めると、弛みなくピ
ンと張れることに気が付きました。そのため、
実際に型取りしている脚のパーツは、図面上
のものと型が違っているのです。私は初め、
そうとは知らずにつくってみたら、案の定座
面の裏が弛んでしまいました。よくよく研究
してわかりました。穴が空いていた訳も、わ
かりました。これはベリーニのデザインでは
なく、製造工程で生まれた工夫です。また、
背の上部に注目してください。少しカーブが
ついているのに気が付くでしょうか。この微
妙なカーブが全体の印象をかなり左右してい
るのです。粋になるか野暮になるかの違い、
とでもいいましょうか。縫い目の揃い具合は
多少不揃いでも、ものそのものを粋に見せる

かっちりとした革の感触が特徴。デザインの美しさと職人の技術が絶妙な調和を見せている。ニューヨーク近代美術館の永久展示にもなっている。色は赤茶と黒の2種Oアームチェア、2人掛タイプもある。
W520 × D470 × H800(SH430)
メーカー=カッシーナ社(伊)
デザイン=マリオ・ベリーニ

すべはとことん研究する、そこがイタリア人
らしいところです。

布でつくったもうひとつのキャブ
 使い始めは、長時間坐るには痛いくらいに
硬いけれど、時間をかけて自分の椅子にして
いく。それがキャブです。革の使い方といい、
これはこれで好きですし、魅力的だと思いま
す。でもマリオーペリーニさんが本当につく
りたかったのは、もう少し違ったものではな
かったかというのが、かねてよりの私の印象
でした。
  そこで、材料を革からキャンバス地に変
えて、布製キャブをつくってみたことがあり
ます(前頁写真)。随分やわらかい印象で、
私はとても気に入っています。
 イタリアからカッシーナ社の工場長さんが、
わが社に見えたことがあります。すかさずこ
の布製キャブに目を付けて、すぐイタリアに
もっていきたいといいました。帰国後、マリ
オーペリーニさんに見せたころ「自分がっく
りたかったのは、まさにこれだ」といってく
れたそうです。生産ラインにのるかどうか、
あれこれ試作をしたようですが、結局、布と
いうことで革より高い値段はつけられないう
えに、布はほつれるので革より手間がかかる
という問題点があり、生産には至りませんで
した。けれども、私の感じていたことは間違
っていなかったという自信がもてました。二
〇年以上も前に、マリオ・ベリーニさんと話
した日のことと共に、キャブは一生忘れ難い
椅子になりました。

座面の裏。最後にファスナーを締めて、形をつくるとき革を寄せるために小さい穴が空けてある。

芯になっているパイプは、ただの真直ぐな丸い棒ではない。革を着せたときに、きれいに納まるように、凹凸を付けてある。背の上部には樹脂の角がついている。座と脚のぶつかる2隅には、細いパイプをU字型に熔接して強度を持たせている。

布のキャブ

– Link –リンク